オオカミ専務との秘めごと


仕分けの手を止め、彼女はしばらく考える仕草をした。


「専務の近くにいた人は経理の課長です。一緒に出掛けたわけではなくて、たまたま同じ時間に帰社されただけですね」

「そうなんですか」


経理課長・・・お客さまじゃなくて良かった。

深い息を吐いて台車の柄にがっくりと凭れる。

こんなにホッとしたのは、専務と出会ったあの朝に、事故を回避できたとき以来だ。

でも彼に変なところを見られたことは変わらなく、そこは解決できず・・・。

ううう、どう思われただろうか。

でも言い訳をするような関係じゃないし、ああなった原因を聞かれても専務に言えない。



「塩田さん、私は部署をまわってきますから、お願いします」


彼女は仕分けが終わったようで、封書その他が入った買い物かごを持ってカウンターから出てくる。

私は戻るついでだからと、営業部に届ける分をもらって一緒にエレベーターに乗った。

彼女は二階で降り、私は部に戻る。

台車をデスクの横に置いて、佐奈に郵便物を渡した。

一課での配布は彼女が担当なのだ。



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