オオカミ専務との秘めごと
どう考えても、仕事量が報酬額に合っていないのだ。
依頼してもらえれば、お部屋の大掃除だって車の洗車だって、何でもするのに。
契約のときにそう言ったのに。
「お仕事くださいってメールしてみようか」
そう思えども、躊躇する。
専務は多忙でレンタルどころじゃなかったら、困惑されてしまうかもしれない。
ただでさえ、変なところを見られて心象が悪いのに。
不埒な女は使わん!なんて、このままお仕事が来なかったらどうしよう。
スマホを凝視して悶々としていると、みんなが出勤し始めたので慌ててスカートのポケットに仕舞った。
今は本業に集中だ。
今日は佐奈がお休みで、仕事をカバーしなくちゃいけない。
ハイルング便りの原稿作りも終盤に入り時間には余裕があるとはいえ、精神的に余裕がない。
電話が鳴れば率先して取っていた彼女がいないと、鳴りっぱなしのことがあるのだ。
佐奈の存在の大きさを改めて感じる。
『至急のものがあると困るから、菜緒お願い』
彼女からは、メールのチェックをすることと郵便を分けて配ることを頼まれている。
なので、午後一で受付の子がどさっと置いていった束を手にする。
宛名ごとに振り分けていると、二課の分が二つ混じっていた。
「二課か・・・」
業務中に二課に行くのは初めてだし、今ではすっかり苦手になった長谷部さんがいる。
彼には、なるべく会いたくないのが本音だ。