オオカミ専務との秘めごと
長谷部さんは何事かを考えるそぶりを見せ、少し真面目な顔になった。
「いつもデスク拭いてくれてたのキミ?」
グッと近づいてきて声を潜めて訊いてくる彼に、戸惑いつつも頷いてみせる。
すると、彼は破顔した。
「へえ、そうか、キミかあ。いつもありがとな」
意外過ぎて声も出せずに、席に戻っていく長谷部さんを見つめる。
デスクを拭いていることを知ってる人がいるなんて、思ってもいなかった。
やっぱりスッキリデスクの人は、着目点が人と違うのかもしれない。
ということは、楢崎さんも気付いているのかな。
自分のしていることが人に気づいてもらえると、たとえ相手が苦手な長谷部さんでも嬉しくなる。
気分よく席に戻ろうとすると、刺さるような視線を感じてギョッとした。
鬼のような形相の竹下さんが私を見ている。
あの顔は、絶対長谷部さんと私の関係を勘ぐっている。
言い訳をしたいところだけれど、話しかけるとますますこじれそうな予感がする。
触らぬ神に祟りなし!
逃げるように自席に戻った。
確かに仕事はできるみたいだけれど、長谷部さんは恋人としてはお勧めできない人だ。
竹下さんは彼のどこが好きなんだろうか。
いらぬ嫉妬心を作ってしまったかもしれない。
もう嫌な予感しかせず、がっくりと肩を落とした。
長谷部さんは、私の疫病神だ・・・。