オオカミ専務との秘めごと

長谷部さんは何事かを考えるそぶりを見せ、少し真面目な顔になった。


「いつもデスク拭いてくれてたのキミ?」


グッと近づいてきて声を潜めて訊いてくる彼に、戸惑いつつも頷いてみせる。

すると、彼は破顔した。


「へえ、そうか、キミかあ。いつもありがとな」


意外過ぎて声も出せずに、席に戻っていく長谷部さんを見つめる。

デスクを拭いていることを知ってる人がいるなんて、思ってもいなかった。

やっぱりスッキリデスクの人は、着目点が人と違うのかもしれない。

ということは、楢崎さんも気付いているのかな。

自分のしていることが人に気づいてもらえると、たとえ相手が苦手な長谷部さんでも嬉しくなる。

気分よく席に戻ろうとすると、刺さるような視線を感じてギョッとした。

鬼のような形相の竹下さんが私を見ている。

あの顔は、絶対長谷部さんと私の関係を勘ぐっている。

言い訳をしたいところだけれど、話しかけるとますますこじれそうな予感がする。

触らぬ神に祟りなし!

逃げるように自席に戻った。

確かに仕事はできるみたいだけれど、長谷部さんは恋人としてはお勧めできない人だ。

竹下さんは彼のどこが好きなんだろうか。

いらぬ嫉妬心を作ってしまったかもしれない。

もう嫌な予感しかせず、がっくりと肩を落とした。

長谷部さんは、私の疫病神だ・・・。


< 118 / 189 >

この作品をシェア

pagetop