オオカミ専務との秘めごと

ゲルハルトさんは、ドイツのソーセージマイスターだっけ。

受け取ってパラパラ捲ると、どうやら専門誌っぽい。

文字は読めないけれど写真だけ楽しみ、雑誌を返すと大神さんは私をじっと見つめた。


「お前は、今日何がしたい?」


そう訊かれても特にしたいことはなく、出掛けたい場所もすぐに思いつかない。


「じゃあ、お前は“寝ること”と“食べること”以外に、何が好きだ?」

「へ?・・・えーっと」


寝食以外って・・・私は、彼からそんな風にみられていたのか。

確かに彼の前ではよく寝るしよく食べるけれども。

弱冠ショックを覚えつつ“好きなこと”を探せば、すぐに浮かぶのはアレしかない。

大抵の男性が引いてしまうという、アレ。


曖昧に笑って首を傾げていると、大神さんは「早く言え」と急かしてくる。


「お前に何もしたいことがなければ、俺のしたいことをするぞ」


腕を引かれてよろける私を抱き止めて、「それでいいのか?」と囁いてくる。

そんな色気のある声で言われたら、もうこれは言うしかない。


「ほ、ホラー映画を観るのが好きです!!」

「ホラーって、怖いやつか・・・」


そう呟いた彼は、ちょっぴり固まっていた。



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