オオカミ専務との秘めごと
「菜緒、おはよう!」
週の始まり月曜日。
佐奈は出勤して来るなり、私のデスクにオレンジ色の紙袋をトンと置いた。
「おはよう。これ、どうしたの?」
「お土産。地元のもので、私が一番好きなもの。きっと菜緒も喜ぶと思って」
「嬉しいっ、ありがとう!」
何だろう。期待しつつ紙袋の中を見ると、細長い箱が入っていた。
市松模様の金ぴか包装紙が高級感に溢れていて、なんだかわからないがスゴイ。
「長崎名物のカステラ。菜緒にはお仕事で迷惑かけたから、まるまるどーんと一本進呈!しっかり食べてね」
カステラ!子供の頃から大好きだ。
あの薄紙についた茶色い部分が特に好きで、幼い頃はお母さんにねだって、紙についているのをスプーンでカリカリ剥いでもらって食べたっけ。
本場のものを目にするのは久しぶりだ。
「すっごい好きなの。しっかり味わってガッツリ食べるね!」
「やーん、菜緒、心底嬉しそう!買ってきた私も嬉しいよ!あっ、いけない。仕事が始まる前にお土産配らなきゃ」
そのために早く来たのにと呟きながらガサゴソと紙袋をいじって菓子箱を出し、みんなのデスクをまわって個別包装のお菓子を配り始めた。
佐奈の実家は長崎で、お姉さんの結婚式に出席するために金曜から帰っていた。
みんなに「どうだった?」と訊かれて笑顔で答えている。
そんな佐奈に、長谷部さんが早速話しかけてきた。
てのひらを差し出して「俺のは?」なんて言って、爽やかに笑っている。