オオカミ専務との秘めごと
「菜緒だから言うけど、私、一度だけアイツと寝たんだ」
「ええええっ!!?」
「しーっ!菜緒ってば驚き過ぎ!」
口を押えつつあたりを見回せば、空き始めた食堂の中は相変わらずにざわついていて、私の声に反応した人はほんの少しだった。
佐奈にグッと近づき、できるだけ声を潜める。
「ご、ごめん。あまりにも衝撃的で、つい・・・。それで、寝たって、いつ?」
「彼と別れてすぐの頃。慰められて、寂しくて、つい・・・。アイツは同情で抱いただけだろうけど、すごく優しかったから、私も甘えちゃって」
佐奈はその時を思い出すかのように目を伏せていて、それがすごく悲しそうに見える。
「だからアイツが誘ってくるのは、それが目的だと思う。菜緒も知っての通りチャラいし、ひとりの女に収まらない男だよ」
「そう、だね・・・」
でも、引く手あまたの長谷部さんが佐奈に固執するのは、やっぱり特別な感情があるんじゃないかな?とも思う。
チャラ男じゃなければ、佐奈は長谷部さんと付き合っていたのかな。
彼女の様子を見てそう感じた。
「あ、菜緒。もうすぐお昼休み終わっちゃう。急ごう」
「あ、ほんと。あと十分しかないっ」
急いで食べて片付け、食堂を後にした。