オオカミ専務との秘めごと
部に戻って仕事をしている私に、楢崎さんが一緒に会議室まで行くように言った。
楢崎さんのあとについて中に入ると、男性社員が一人席に着いていた。
面識はないが、白髪交じりの髪で落ち着いた雰囲気から判断するに、重役クラスの人だと思える。
「神崎さん、こちらは人事部長の新見さんだ」
紹介されて会釈をすると、部長に着席を促されたので向かい側に座った。
楢崎さんは私の隣の席にいて、いわゆる三者面談のような形になる。
「急に呼び出して悪かったね。仕事は忙しい?」
「はい。でもこなせない量じゃないです」
人事部長が私に何の用だろうか、すごく緊張してしまう。
長谷部さんから頼まれた二課に異動する話だと考えると、部長の面談なんて大袈裟に思える。
もしかして、秘密のはずの副業がばれたんだろうか。
息をのんで見つめる私に、部長は柔らかい口調で問いかけた。
「神崎さん。君は英語とフランス語ができるそうだが、どの程度のレベルか教えてくれないか」
「読んだり書いたり、日常会話ができるくらいです」
「ビジネス用語はどう?」
「フランス語であれば、少し分かりますが、完璧ではありません」
「そうか。それなら十分だろう」
「あの、二課に異動する話ですか?」
「いや、違う。これはまだ極秘事項だから、誰にも言わないでほしいんだが・・・単刀直入に訊く。君は海外支部に行く気はあるか?」
「ええっ、私が海外に、ですか!?」