オオカミ専務との秘めごと
専務とは――株式会社の役員のひとつ。社長を補佐し、会社全般の管理業務を行う役職――。
管理業務というのは、人事管理も含まれていそうだ。
思わず辞書で調べてしまった。
だってあまりにも雲上の人過ぎて、普段何をしているのかさっぱりわからないから。
お昼のニアミスから三日が過ぎた今は、私なりにメイクを工夫し、いつも縛っている髪をおろし、一緒に過ごしたあの日とは違う自分にしている。
でもそれだけでは駄目だと、最近気が付いた。
隠れ続けるためには、相手を知らなければならないと。
ただやみくもに避けてビクビクしているだけでは、健康な社会人生活が送れないのだ。
毎日のスケジュールなど知る術がないけれど、いつも何時に出社されて何時に帰るのか、それだけでも知ることができれば、この先少しは遭遇率が下がるはず。
なんとかしてリサーチしなければ・・・。
ランチを終えて戻ってきた営業部。
佐奈はメイク直しを終えて、スマホをいじっているところだ。
駄目元だけど、先ずは彼女に訊いてみる。
「ね、佐奈。専務って、私たちと同じ時間に出社されるのかな?」
「んー、どうかなあ。専務自体は会社の就業規則に縛られないし。なんか、重役って毎日バラバラな時間に来るイメージがあるよね」
佐奈はメールをしているようで、スマホから目を離すことなく答えてくれた。
「んー、やっぱりそうかあ」