オオカミ専務との秘めごと
バラバラじゃ“専務注意報”が解除される時間がなくて、フロアから出るたび気が抜けない。
安心できる時間帯は一分もないんだろうか。
「ん、菜緒?唐突にそんなこと訊いてくるなんて、どうしたの?」
どうしたの?と訊かれても、本当の理由を言えるはずもなく、答えに窮する。
「んー、なんとなく知りたくなったというか・・・」
苦し紛れにそういった途端、スマホから目をあげた佐奈がこっちを向いた。
なんだか、私を見る目がキラキラと輝いてみえる。
「知りたくなったって・・・それってもしかして、この間すれ違ったときに一目惚れしちゃったの!?実物、すっごい素敵だったもんね!そっかー。最近の菜緒のメイクが可愛いのは、そういうわけだったのかー」
うんうんと頷いてにこーっと笑う、その嬉しそうな顔は完璧に勘違いしている。
店長といい佐奈といい、どうしてみんな話が飛躍するんだろうか。
「違う、違う。ただ何時に来るのか気になるだけで、そんな意味はないよ。相手は雲の上の人だし、惚れるなんて滅相もない」
「菜緒、そんなことない。雲の上の人なんて、好きになる気持ちには全く影響しないの。ただ彼のことが“気になる”それが、恋の入り口!気になる人のことは知りたいし、会いたくなるよね。よしわかった、この私に任せなさい」
佐奈は「調べてあげるね」と言って、再びスマホをいじり始めた。