オオカミ専務との秘めごと

知りたい動機は「会いたい」と真逆だと言えないのがツライ。

彼女の勘違いは訂正しようとすればするほどに、どんどんあらぬ方向にいくタイプで、誤解されていてもあきらめるしかないみたいだ。

でも、少しでも専務の動向を知ることができて遭遇率が下がるなら、もうこの際動機はなんでもいい。

今は激流に踊る一本の藁にもすがってみる!


「ありがとう、佐奈。すごく頼りにしてる!」

「今、塩ちゃんに連絡してみたの。きっとすぐに情報が集まるはずだから、待ってて」


塩ちゃんとは塩田さん。

受付にいるひとつ下の後輩社員で、佐奈とは合コン仲間。

ショートヘアがよく似合う子で、エクボの笑顔が来社される人に評判がいいと聞いたことがある。

そういえば、この間の合コンにもいたっけ。


「でもさ、あんなにスペックも容姿もいい男じゃ、玉の輿狙いのライバルがたくさんいるよね。社内にも社外にも、抜いて捨てるそばから新しいのがニョキニョキ生えてきそう」


佐奈の例えで終わりのない草取りを想像してゾッとしてしまう。

確かに、専務には言い寄る女性が多そうだ。

佐奈は腕を組んで何事かを考え込む仕草をした後、椅子ごと私のそばにずずいっと寄ってきた。


「私菜緒を応援するから。だから頑張って!」

「う、うん・・・ありがと」


謀らずも騙してる形になってる身としては、佐奈の熱い言葉で複雑な気持ちになり、曖昧な笑顔で頷く。

すると、頭上から男性の声が降ってきた。


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