クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「私、大丈夫なので、本当に」

体が思うように動かなくたって、熱があったって、そんなことより大切な……。

『迷惑なんだ』


「えっ……」


『会社に来てもし誰かに移したらどうなる。体調を崩して仕事が出来なくなったら、その分デザインを考える時間が減ってしまう』

「でも、今日は……」

『いいから今日は休め。絶対に外に出たりするなよ!これは社長命令だ』


「分かりました……」


こんな時だけ社長って言葉を使うなんて、ずるい。

私だって、みんなに迷惑をかけたくないから休むべきだって頭では分かってる。

実際迷惑はかけたくないし、私ひとりが風邪を引くのと他の三人の誰かが風邪を引くのとでは、重みが全然違うということも。


だけど……今日は……。


休むのはあたり前だし、自己管理が出来ていないんだから自分の責任だ。

でも、でもなんで、今日なんだよ……。

私の、馬鹿……。



〝明日、仕事が終わったら……柚原が俺に食事を奢れ〟



佐伯さんにとっては、いつもと変わらない日だったのかもしれない。

でも、私にとって今日は……大切な日だったのに。

ほんと、自分が情けなくて泣けてくる。


手探りで枕元に置いてある体温計を掴む。


「三十九度って……」


風邪を移すくらいなら、佐伯さんとの時間が無くなるくらいどうってことない。

そう必死に自分に言い聞かせながらフラフラと立ち上がり、そのままベッドに倒れ込んだ。





< 105 / 159 >

この作品をシェア

pagetop