クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「手を出すなんて人聞きの悪い。コンペに勝ったら食事でもって話してただけですよ」

河地さんも負けじと、決して笑顔を崩さない。


「コンペに勝つのは……私達です」

その佐伯さんの言葉に、ようやく河地さんの眉がピクッと動いた。


「それはどうでしょうか。私は向こうで充分すぎるくらいデザインの知識を身に付けました。勝つことしか考えてません」


河地さんがそう言うと、すぐ近くにいる私にだけ聞こえるくらいの音量で、フッと笑った佐伯さん。


「私は今も勉強中です。なので、あなたには負けません」

「……?」

口を開けたまま、意味が分からないといった表情で佐伯さんを見つめる河地さん。


でも、私には分かる。

二年間充分すぎるくらい頑張ったという河地さん。

でも佐伯さんは、今も尚、学ぶことをやめていないから。

沢山努力して、もう充分だと周りの人は思うだろうけど、佐伯さん自身はそれでもきっと納得していないんだ。


もっともっと上を目指す為に立ち止まらずにいる佐伯さんは、ワームデザインの佐伯社長は……私達の誇りです。



「では、失礼します」

私の肩に手を回したまま、河地さんに背を向けた佐伯さん。


けれど少し歩いたところで佐伯さんは「言い忘れてた」、と言って再び立ち止まった。


「どうしたんですか?」

私の問いかけに答えることなく、振り返った佐伯さんは……。



「さっきあなたは柚原に、綺麗になったと言ったが……」



・・・・えっ?






「こいつは、柚原は……最初から綺麗だ」






佐伯さん……。





いつも冷たくて意地悪なくせに、時々こうやって佐伯さんの言葉が私の心に深く届いてくる。


嬉しくて、嬉しくて……抑えようと思っても、涙が溢れてきてしまう。



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