クールな御曹司と溺愛マリアージュ
*
『ご飯買った?もしかしてもう着いちゃう?悪いんだけど、他にも買ってきて欲しい物があって』
「全然大丈夫です」
『よかった。じゃーメール送るから、ごめんね』
「いえ、全然。了解しました」
拓海さんからの電話を切った私は、あと数歩で会社に着こうとしいていた体をうしろに向き直した。
メールを確認して急いで本屋に行き、小走で会社に戻る。
週末でもないのに、陽気なサラリーマンの姿がちらほら見受けられる。
街の中は明るいけれど、空を見上げるともう真っ暗だ。
「戻りました~。お待たせしてすいません」
息を切らして中に入ると、パソコンに向かっていた三人が私のもとへ近づいてくる。
「いつも買い物頼んじゃってごめんね」
「拓海さん、そんなこと気にしないでください」
デザインの仕事は出来ないけれど、忙しい三人の代わりに私がやれることは全部引き受けると心に決めたから。
買い出しだろうとなんだろうと少しでもみんなの力になれるなら、それを全力でやるのみ。
「やったーどんどんの焼肉丼」
成瀬君は私が買ってきた袋をあさり、嬉しそうに焼肉丼を持ち上げた。
「お前は、またそんな胃もたれしそうなものを食べるのか」
「俺はまだまだ若いですからね。肉を欲するこのこの気持ちは佐伯さんには分かりませんよ~」
成瀬君の言葉に、私は思わずプッと吹き出した。
「なに笑ってんだ」
「いえいえ、別に~」
佐伯さんに睨まれてしまい、私は誤魔化すように自分のサラダうどんを手に取る。
どうも佐伯さんは脂っこい物が苦手らしい。
歳のせいだと成瀬君に言われると、ヘルシー志向なんだと言い返すのはいつものこと。