クールな御曹司と溺愛マリアージュ
翌日、雑用に追われながら自分の仕事をこなしていると、噛り付くようにパソコンに向かっていた佐伯さんと拓海さんが、夕方になって急に慌ただしく動き始めた。


「柚原、これから俺はレストランの方に行って、拓海は〇〇ホテルに向かう。今日は成瀬も戻らないし、お前も早めに上がっていいぞ」

「みなさん出掛けるんですね。なにか雑用があればやっておきますど」

「今日はいい。たまには早く帰って資格の勉強に集中しろ」

「……分かりました」

こうなると佐伯さんは絶対に引かないと分かっているから、私も素直にそれに従う。


「出る時戸締まりちゃんとしろよ」

「はい」

「あと、誰か来てもちゃんとモニターに名刺映してもらって、怪しくないと確信してからドアを開けろよ」

「はいはい」


父親のように心配してくる佐伯さんの横で、クスクス笑っている拓海さん。

ほんと、子供じゃないんだからそれくらい大丈夫だっていうのに。


「じゃー行ってくる」

「恵梨ちゃん、行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃい」



鍵を閉めた私は、フーッと軽く息を吐いた。

仕事中は基本的に静かだけど、誰もいない会社は更に静かだな。

そう思いながらひと息つこうと紅茶を入れてスマホを手に取ると、有希乃ちゃんからのLINEが入っていた。


[今日仕事何時に終わりますか?忙しいですよね?]

[みんな出掛けちゃったから今日は久しぶりに十八時には終わるよ~]

[マジですか?じゃーちょこっと飲みに行きませんか?]

それに私がOKと返事を送ると、泣きながらありがとうと言っている変なキャラクターのスタンプが送られてきた。




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