クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「もー、恵梨さんって恋愛になるとほんと面倒くさいですね」

「だって佐伯さんだよ?モテないわけないし、数いる中で私を選ぶとは思えないよ」

「分かりませんよ」

「え?」

「恵梨さんは割と恋愛に鈍いから分からないかもしれないけど、色んな恋を経験してきた私にはなんとなく分かるんです。今までの佐伯さんの話を聞いてる限り……」


一瞬俯いて止まった後、私を見上げでニヤッと笑った有希乃ちゃん。

「ああ見えて佐伯さんて、意外と……」


意外となんだろうと思ったけど、有希乃ちゃんはその続きを聞かせてくれなかった。


「まぁその先は恵梨さんが自分で体験してください」

「なにそれ、ずるい」


佐伯さんの意外な部分なんて、今まで沢山見てきた。

それ以上になにかあると、私の話しだけで有希乃ちゃんは感じたんだろうか。

「まーいいじゃないですか。飲みましょう」


気を取り直して仕事の話をしていると、入口付近が急に騒がしくなったように感じた。

「うっそー、マジですか?」
「うけるー」

若そうな女子の高い声が聞こえてくるなと思っていたら、ぞろぞろと人が入ってきて、その中の一人が私達の席の前に立ち止まった。


「あれ?柚原さん?」

聞き覚えのあるその声に顔を上げると、そこに立っていたのは初見さんだった。


「あっ、どうも」

「久しぶり。っていうか、前うちの会社に来てたのは見かけたけどね」

会議の時のことだろうか。そう言えば、あの日初見さんが総務部にいたかどうかは記憶にない。


「二人で飲んでるの?寂しいね」

別に、全然寂しくないし。寧ろ有希乃ちゃんと飲むのは楽しくて仕方がない。

ふと有希乃ちゃんの顔を見ると、嫌そうに顔をしかめながらつまみを食べている。


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