クールな御曹司と溺愛マリアージュ

「柚原さん、随分雰囲気変わったね。まぁ関係ないけど。私これから合コンなんだ」

耳もとでそう囁かれたけれど、それを言われたところで「そうなんだ」、と返事をすることしかできない。


ていうか、会社帰りに会社のすぐ近くで合コンって、凄いな。


「じゃーね」

そう言って私達の席を離れてくれたと思ったら、初見さんはそのまま私の真後ろに腰掛けた。

なんか、すごく背中に違和感を感じてしまう。


初見さんのことは気にせず二人で話を続けているけれど、なにも悪いことはしていないのになぜか小声で話してしまう私と有希乃ちゃん。


「あと一杯飲んだら帰ります?」

「うん、そうだね」


うしろからは、相変わらずどこから声を出しているのか分からないくらいの猫なで声が次々と聞こえてくる。



そんな調子で一時間くらい飲んだ頃、私の背中をトントンと誰かが叩いた。

誰か、じゃないか。初見さんしかいない。


無視することは出来ないから仕方なく振り向くと、笑顔で私を見つめる初見さん。

「あの、なにか?」

「ねー柚原さん、そっちはどうなってる?」


意味が分からずに首を傾げると、お酒も入っているからか少しイラついたように目を細めた初見さん。


「だから~、コンペのこと。そっちは順調?」

「コンペ?あぁ、まー順調だけど」

どうして初見さんがそんなことを気にするんだろうと思ったけれど、その疑問はすぐに解決した。


「河地さん、めっちゃ頑張ってるんだよ。この前飲みに行ったんだけど~、あの人は本当に凄いよ」

いやいや……今まさに他の男性と合コン中なのに、聞こえていないとはいえ、そんな発言をしていいんだろうか。



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