クールな御曹司と溺愛マリアージュ

「……え……?」

受話器を握りながら、徐々に体が震えてくるのを感じていた。

椅子に座っているはずなのに不安定で、恐怖にも似た感覚が襲ってくる。


『あの日、恵梨さんと飲んで……』

全ての記憶を辿って確信にたどり着いた時、気が付くと涙で視界が霞んでいた。


『大丈夫ですか?でもきっとなんとかなると思うので』

「教えてくれてありがとう、有希乃ちゃん……」

電話を切った私は、溢れ出そうになる涙を拭いながら真っ黒な画面を見つめ、有希乃ちゃんの言葉を思い出す。


 ◇

この前会社の飲み会に呼ばれて、渋々行ったんです。
そこには河地さんもいて、あんまり近寄らないようにしてたんですけど、いきなり私の隣に来ていつもの自分話を長々と聞かされて。

うんざりしてきた頃に言われたんです。『コンペに出すデザイン、知りたくない?』って。

河地さんのデザインには興味なかったですけど、正直ワームとしてどんなデザインを出品するのかは気になって、そしたら……。


あの日、恵梨さんが怒って初見さんに伝えたワームデザインのものと、凄く似ていたんです。


『ガラスをメインにしていて、まるで空の中で式をしているような感覚に陥るんだ。照明よりも、太陽が反射して出来る光の方が綺麗だろ?』って。

私、いてもたってもいられなくて、次の日初見さんに確認したらすぐに吐きましたよ。

『あの後河地さんに連絡して、ワームデザインの作品はこんな感じらしいけど、河地さんの方が全然凄いって思いました。とは言ったけど、それがなにか?』

初見さんにそう言われて、ピンときたんです。
河地さんはそれを参考にして、デザインを考えた……。

初見さんはああいう人だけどそこまで頭が回るわけないし、計画的に恵梨さんに聞いたわけじゃなくて、多分河地さんに喋ったのも河地さんの方が凄いっていうのを伝えたかっただけだと思うんです。

つまり、初見さんから聞いた瞬間にデザインを盗もうと思いついたんじゃないですかね、河地さんは……。


不本意ですが、私が河地さんに好意があるように演じて、後で河地さんからデザインを見せてもらう約束をしたので、また後で電話します。

 ◇


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