クールな御曹司と溺愛マリアージュ
もし本当にワームデザインのものと似ていたら、私があの時ムカついて初見さんに話してしまったから……。

そしたら、どうなってしまうんだろう……。

佐伯さん達はなにもしていないし、悪いのは河地さんだけど……。

どうしよう……。そう思えば思う程不安になって、こみ上げてくる涙をグッと堪えた。


「柚原、どうした」

私の横に立った佐伯さん。でも私は、その顔を見ることが出来ない。


「いえ……あの……」

なにも言えない私を見た佐伯さんは、私の椅子を回して自分の方に向けた。

そして、座っている私と目線が合うように、デスクに手を置いてしゃがみ込む佐伯さん。


「話してみろ、なにかあったのか?」

そんな優しい目で、見ないで下さい。

私は……もしかしたらとんでもないことをしてしまったかもしれないのに。


「柚原がそんな顔してるのに、放っておけない……」


「佐伯さん……私……申し訳ございません!」


立ち上がって頭を下げた私は、さっき有希乃ちゃんから聞いたことを、三人にも話した。


「私、ムカついてしまったんです。みんなを馬鹿にされたような気がして、我慢できなくて……こんなに素敵なデザイン考えるのにって、だから……」

よりによって、コンペのライバルとなる会社の社員に話してしまうなんて、考えられないミスをしてしまった。


「恵梨ちゃんさ、なんで謝るの?」

「それは、私が……」

佐伯さんのうしろに立っている拓海さんにそう言われ、私は顔を上げた。

「だって、恵梨ちゃんは俺達の為に言ってくれたんでしょ?」

「はい、でも……」

「俺も、恵梨ちゃんの言葉、マジでジーンときちゃった。嬉しいですよ」

「成瀬君……」


そしてスッと立ち上がった佐伯さんが、私にハンカチを差し出した。


「拓海と成瀬の言う通りだ、お前がそうやって目に涙を溜めてまで謝る必要はない」

「でも私……」

「とりあえず、倉永さんの連絡を待ってからだ」



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