クールな御曹司と溺愛マリアージュ
有希乃ちゃんから連絡がきたのは、丁度ワームのお昼休みが終わった頃だった。


『恵梨さん、私です。見たデザインを伝えますね』

私は有希乃ちゃんに言われたことを、佐伯さん達にも伝わるようにとその場で繰り返した。


全く同じというわけではないし、デザイン自体は違う物だろうけど、有希乃ちゃんの説明を聞く限りコンセプトは同じだとすぐに分かった。

ガラス、光、空の中。


『悪いのは河地なんだから、恵梨さんは気にしちゃ駄目ですよ!』

「うん、ありがとね有希乃ちゃん。嫌なことさせちゃってごめん」

『謝らないで下さい。ワームの社員である私が言うのもなんですけど、こういうことする人って絶対許せないから』


電話を切った私が佐伯さんに視線を移すと、三人はテーブルを囲んで何かを話しているようだった。


締め切りまで半分を切ったというのに……。
私の責任なんだから、私が河地さんに話をしなきゃ。


「佐伯さん。あの、私行ってきます」

「行くってどこに」

「ワームへ」

そう行ってドアノブに手を掛けた私の腕を、うしろから佐伯さんが掴んだ。


「行かなくていい」

「え?でも、このままじゃ」

「いいから、お前もこっちに来て座れ」

佐伯さんに腕を引かれ、私も含めて四人でテーブルを囲って座った。


「こんなことをするやつが現実にいるというのには少し驚いた。しかも同じ会社の系列で」

「ほんとですね~、安いドラマの設定みたいですよ」

のん気にそう言って背もたれに寄り掛かった成瀬君。


「そうだな、それで会社のプレゼンに通っちゃうんだから、ワームは結局他に良いデザインがなかったってことか」

拓海さんはコーヒーを飲みながら目の前にある雑誌を開き始めた。




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