クールな御曹司と溺愛マリアージュ

「さ、じゃー恵梨ちゃん、改めて挨拶どうぞ」

「成瀬、お前なに名前で呼んでんだ。しかも〝ちゃん〟って」

「いいじゃないですかー。仕事さえしっかりやればいいって言ったのは佐伯さんですよ？」

「そういう意味で言ったんじゃない」

「そうだ、佐伯さんも恵梨ちゃんって呼んだらどうですか？」


「呼べるか！」


「じゃー俺も恵梨ちゃんって呼ぶよ。俺の事は拓海さんって呼んでもらおうかな」

二人のことを父親のような温かい視線で見守っていた伊勢谷さんまでそう言って、私の肩に手を置いた。


「拓海……お前までなに言って……」

「いいじゃないか。恵梨ちゃんすごく緊張してるみたいだし、早く会社に慣れてもらう為にも」

「いいんですか？」

「柚原、お前も乗るな！」

「全然いいよ。少しでも恵梨ちゃんにリラックスして仕事してもらいたいし。名前で呼び合ったからって仕事にはなんら支障はないから。そうだよな？佐伯社長」

「あのなー、お前ら……」


三人のやり取り、兄弟喧嘩みたいで面白いかも。
しかもずっと変わらなかった佐伯社長の表情が少し照れたように俯いたり、眉間にしわを寄せて不機嫌になったり。
絶対口には出せないけど、感情がきちんと表に出ている社長って、ちょっとだけ可愛い。


「えっと、では。改めまして、柚原恵梨です。正直今自分がここにいることが、まだ少し信じられないというか、面接の時は絶対落ちたと思っていたので。
でもこうして皆さんと仕事ができることになり、本当に嬉しいです。会社の為に精一杯頑張りますので、宜しくお願いします」


当たり障りのない挨拶になってしまったけど、なんだかやっと肩の力が抜けた気がして……。


ーーグゥ～～

お、お腹鳴っちゃった……。しかも丁度静かになったタイミングだし！