クールな御曹司と溺愛マリアージュ
大きなベッドが置いてあるベッドルームには鏡があるだけで、余計な物は一切置かれていない。

その隣にあるこれまた大きなリビングは天井が高く、テレビと白いソファーに、ガラスのテーブル。キッチンの前のカウンターにはお洒落な黒い椅子が三脚並んでいる。


そしてなによりリビングを囲っている大きな窓からは、まるで写真を見ているかのような澄みきった青空が広がっていた。


ゆっくりと窓に向かうと、思わず息を飲んでしまうような景色に少しだけ体が震えたような気がした。


見下ろした先にはいくつものビルや建物、そして緑が生い茂った公園のような場所も見える。



「ここって、何階なんだろう……」


自分の置かれている状況が分からないままボーっと窓の外を見ていると、どこからからスマホの着信音が聞こえてきた。


その音で我に返った私は、ベッドルームに置いてあった自分の鞄からスマホを取り出す。



「もしかしてここって……」

画面に映る名前を確認した私の頭の中では、とんでもないことをしてしまったのではないかという思いが駆け巡った。


「……はい」

『起きたか』

佐伯さんだ。やっぱり、ここは多分。


「あの、佐伯さん……私」

『カウンターの上に置手紙があるだろ。その通りにしろ』

「えっ、いや、あの私……」

『時間に一分でも遅れたら全員に昼奢れ、いいな』


ーープツ……


「ちょ、え?あの、もしもし?」

一方的に喋って一方的に電話を切られてしまった。

もう一度スマホを確認すると、時刻は丁度七時。


とりあえず佐伯さんの言っていた手紙を探そうとカウンターを見てみると、隅の方に電気ポットや幾つかの瓶が置いてある白いカウンターの真ん中に、それはあった。

一枚のメモ用紙を手に取る。


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