クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「拓海さんから電話で詳しく聞いたんですけど、俺マジ最低でした。女性の恋愛にずかずか踏み込んで」
「いいのいいの、もう本当に気にしないで。私も昨日は楽しかったし、みんなに話せて肩の荷が下りたっていうか」
中に入った私は荷物を自分のデスクに置いて座った。
「ていうか、恵梨ちゃんなんか今日違いますね」
「違うって?」
「服装、凄く似合ってて可愛いですよ」
そうだ、会社に来る間にすっかり忘れてた。私が今着ている服は、佐伯さんが用意してくれた物なんだ。
「あぁ、そ、そう?ありがとね」
明らかに動揺しつつ、なんとか冷静に答えた。
「そう言えば昨日大丈夫でした?俺もあんまり覚えてないんだけど、恵梨ちゃんも相当酔っ払ってたって拓海さんが」
その言葉にじっとしていられなくなった私は、お茶を入れる為立ち上がった。
「だ、大丈夫だよ。二日酔いも全然ないし」
「それならよかった。俺は朝ちょっと気分悪かったけど、意外と大丈夫でした」
成瀬君の口ぶりから、多分私が佐伯さんの家に行ったことは知らないんだと悟った。その瞬間、ホッと胸を撫で下ろす。
だけど昼過ぎには二人が帰ってくるわけだから、それまでになんとか少しでも気持ちを整理しよう。まずは仕事に集中。
お茶を飲んで再びデスクに座ると、佐伯さんからの仕事の指示が書かれたメモが置かれていた。
今日はメモの日だな。
それにしても、佐伯さんは字がとても綺麗だ。書道でも習ってるのかな?
そんなことを思いながら、私は佐伯さんの指示を基に仕事を始め、成瀬君もパソコンに向かって無言で仕事を始めた。
時々襲ってくる目覚めた時の布団の柔らかさや、着ていたティーシャツの肌触り。それらの雑念を振り払うかのように仕事に集中した。