クールな御曹司と溺愛マリアージュ

「恵梨ちゃん、お昼行かないの?」

「もうそんな時間?」


ふと時計を見ると、十二時を回っていた。

そういえば昨日注文した眼鏡、取りに行かなきゃ。


「成瀬君は?」

「俺はまだやることあるんで、先に恵梨ちゃん行っていいですよ」

「分かった。じゃー行ってきます」


小さいバッグに財布とスマホを入れて外に出た私は、真っ先に眼鏡屋に向かった。


昨日の夜に入った時とお店の中が少し違って見えるのは、ただ単に昼間だからなのか、それともここに佐伯さんがいないからなのか……。


店員さんが確認の為取り出してくれた眼鏡を受け取り、その場で掛けてみた。

やっぱり五年前よりも視力が落ちたんだ。この眼鏡だと良く見える。


店内の鏡に映る自分は、佐伯さんが選んだ眼鏡と服を身に纏っていて、とても不思議な気持ちになった。

これが本当に私なのかと、疑ってしまうほどだ。


人からどう思われているのか不安で恥ずかしいという気持ちもまだ少しあるけれど、それよりもずっとずっと、心の中が喜びで満ちていくような感覚。



買った眼鏡を掛けたまま店を出て、近くのハンバーガーショップでお昼を取った私が会社に戻ったのは十三時。

ドアの前で一度立ち止まる。


なんだか朝も同じようなことをしていたけど、もう佐伯さん戻ってるのかな……。

私昨日、何をやらかしたんだろう。まさか佐伯さんを襲ったりしてないよね……。

でもいくら悩んでも全く覚えてないんだから、入るしかない。



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