君思い
ガラッ

「遅かったねーなにし……!
なーるほどぉ、そういうことかぁ」

ニヤニヤしながら繋がれた右手を見るさやの頭を軽く叩き、同時に手を振り払った

「あれ?まだ繋いでても良いんですよ?先輩」

『いや!部室までって言ったからね!従ったからね私は!…なにその笑顔怖いんですけど!やめてくんない!?』

笑いながら黒いオーラを醸し出す誠君から距離を置くために、部室の奥、窓際まで素早くあとずさる

我が写真部の部室は第2校舎という人気のない校舎の4階という薄暗いイメージを持たれているが、最上階ということもあり、グラウンドから校門までが一望できる大きな窓付きの、比較的好条件な部室だ

その窓に背中が当たる前に、何か温かな逞しいものにぶつかる

『…げっ』

「やぁ、問題児。
お前はいつになったら大人しくなるんだ?躾けてやろうか。」

がっしりと肩を掴まれ、暑くもないのに汗がすごい

恐る恐る振り向くと、誠君よりもどす黒いオーラをまとった笑顔の鬼がそこにいた
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