届かないこの想いを、胸に秘めて。




「で、雪菜。なにぐずぐずしてるの」


急に話を振る香奈恵ちゃんに喉を詰まらせた。



「そ、れは……」

「ほら!行け!」

「えっ、ちょ、香奈恵ちゃん!?」



こういうのはもう突っ走るのみ!と私の手を掴んで立たせ、背中を押されて廊下に出された。



廊下はとても冷えていて、鳥肌がたった。


でも、そんなことよりも香奈恵ちゃんの思わぬ行動に目をパチクリさせた。




「ほら、行ってきな!」

「えっ、でも」

「せっちゃんは押しが足りないんだよ〜」



だから私たちが押してあげるの!とそう言った和海ちゃんは香奈恵ちゃんの横に立って私に笑いかける。


先ほどこっそりとポケットに入れた手紙を外側から確認するように触れる。


キミに伝えるためだけに書いてきた手紙。


キミを目の前にすると言いたいことが全部飛んでいってしまいそうだから、想いをここに詰め込んだ。


書き出すと止まらなくて、1枚だけに収めようとしたけど、結局3枚書いてしまった想いの詰まった手紙だ。



伝えたい。
最後に笑顔でこの恋とさよならをするために。



手を握った。強く。それでも不安は消えない。


やっぱりまだ怖いんだ。


急激に加速した鼓動にそう感じた。







< 291 / 306 >

この作品をシェア

pagetop