妖狐の花嫁
「華。これは全部、華のためなんだよ。」
彼は頬杖をついていた手を退けて
綺麗に座り直すと
静かに 私に向けてそう言った。
「………。」
「まぁ確かに…華からすれば
俺が手荒な手段で迫ってる様にしか思えないだろうけど。」
彼は小さく笑いながらそう言って
静かに手をあわせると、
朝食を食べ始めた。
…私はそれに何も返さず
彼と同じ様に手を合わせて
朝食を食べ始める。
───私のため、って何?
どこが私のためなの?
こんなに辛い思いをして
友達を奪われることのどこが私のため?
……そんなの、ただの偽善だと思った。
しばらく黙ったまま食事を進めて
私はすぐに箸を置いた。
…あんまり食欲がない。
そんな私の様子を見て
黒田くんも同じ様に箸を置くと
小さく微笑んで 私を見る。
「…外に出ようか、華。」
「……外…?」
彼の言葉に私が尋ね返すと
黒田くんは小さく頷いて
近くに控えていた椋さんに指示を出す。
椋さんは「畏まりました。」と返事をして
静かに部屋を出て行く。
外って…どうして?
何か用事でもあるの?
私がそんな風に疑問を抱いていると
黒田くんは立ち上がって
私の側へやってくると、私の手を取って
その場から立ち上がらせた。
「俺の側から離れちゃダメだよ、華。」
"外は危ないから"と
黒田くんが呟くと同時に
目の前が───白く光った。