神と忌み子

忌み子【アランside】

…魔法大会の開始を告げる音に、俺は顔をしかめた。
「…うるさ…。こうなるなら、一番なんて引くんじゃなかった…」
そう言いつつ、俺は制服を整えた。
整えた時、何となく最近唯一近くにいる女子の顔が浮かんだ。
リア・クラウド、俺の近くにいる女子の名前。
「………リア・クラウド。…クラウドの奴か…」
しかし…クラウドと言われると頷けない。リアの容姿はクラウド特有の物ではなかった。
クラウドは、黒と紫が混じった髪に赤い目をしている。…リアは髪は良いが、目は赤いのではなく黄緑の目をしている。
…クラウドは確か……………。良いか。考えたって変わらない。
開始を告げる音がまだ、煩く鳴り響いていた。

……
外に出ると、近くにイオリ、ウグラ、そしてリアがいた。
「アラン~頑張れよ!!」
「アラン、頑張れ!」
イオリとウグラの応援を受けると、ちらっとリアを見るとリアは、慌てたように
「アラン、頑張れ」
と言った。俺は、リアの応援が素直に嬉しく微笑んだ。
…その時、リアの後ろの女子が黄色い声を出したのは気のせいだろう。
あちらから、名前は知らないが先生が二人歩いてきた。
「えっと、アラン君…?」
「…何か?」
「君ならもう少し強い相手でもいるでしょ?」
「………………」
確かにいるかもしれない。…いるかもしれない相手に価値はない。
遠くで、鐘がなった。
「……………………………」
「行くよ!ユリ!」
「ええ!」
先生が二人向かってくる。
「………ッ!?」
二人を、触らず魔力で押し出した。
…その時、鋭い傷みが体に響き渡った。俺の体に幾つもの、黒い矢が刺さっていた。
力を込めて、踏み留まった。…周りの奴等は、どうするんだよ。
「父さん、今すぐ此処の奴らを離れた場所に…っ!」
目の前に、黒いコートの男がいた。俺は、後ずさった。
「…アラン・バルバトス。…お前は生きるべきではない。…お前は忌み子」
「…忌み子…何の話だ?」
「…お前の村は、三人兄弟のお前達の内、最後のお前を忌み子として殺すつもりだった。…アラン、お前は双子の兄を無くしたと言うのに、お前は…っ!」
「…っ!?」
「お前は、俺の命を奪っているくせにのうのうと生きている…!お前が忌み子のくせに…!」
「違う。…アランは忌み子じゃない。俺は生きてるし」
「セシル兄さん…っ?」
「…アラン、お前はお前の友達の所に行け」
「…っ、ああ」
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