今日も明日もそばにいて
「ん〜。中華とイタリアンなら、どっちがいいですか?」
「んんー。中華。でいい?神坂君も」
「勿論。じゃあ…行きましょう」
あ、まただ。…また手を繋がれた。道を渡った。
ビルの入口を少し入ったところ、エレベーターを待った。
「…フフ」
さっきまで、あんなに階段を登ってたのに。
「ん?どうしました?」
「うん。上ってきた東京タワーと比べたら本の少しの階数なのに、エレベーターに乗ろうとしてるって思ったら、何だか可笑しくて」
「ああ、なるほど。じゃあ、こっちで行きますか?」
階段の登り口を指して言う。
「…あー、もー、流石にいいかな…。…目的が変わったから」
「ハハハ。もう今日の分は終わったって事ですか?」
「そんなとこ、かな。あ、来たよ」
「はい」
ドアが開くと同時にドカドカと勢いよく人が降りて来た。
「キャ」
「おっと。危ない…大丈夫でしたか?」
「うん、大丈夫、有難う、ボーっとしてたからごめんね」
肩がぶつかったのだ。こんな事はあると思っていなかった。
降りるという目的と共に、各々、向かいたい方に進むから、その勢いに逃げ場がなかった。
会社のエレベーターとは違う。人の動き方が自由なのだ。休日のお昼時は、我先にという気持ち優先の人が多くなってしまうのかも知れない。
ぐらついた体を神坂君が後ろから支えてくれた。
「このビルは料理屋さんが多いですから、エレベーター混んでましたね。もう一人も乗れないって感じで。混むって解っているから、早目にお昼を済ませた人が多かったんでしょうね」
あっという間に静かになった。人の流れが無くなるとこんなものだ。
中に入り目指す階を押した。
上がるに連れ、上へと移動して行くボタンのランプを見ていた。
…そういえば、またいつの間にか繋いでいる。
「ねえ?神坂君」
「はい?」
「これ…」
少し手を持ち上げてアピールしてみた。
「はい」
「え?ぇえ?」
それだけ?
チン。あ。
「着きました。…人が多いからですよ。迷子になったらお互いツライから…ね?」
…お、お、…ね、って…。物凄い男前なすっきりした笑顔…。これも王子と言われる所以なんだろう。
ふぅ、まぁ…仕方ないか。席につくまでの事よ。