今日も明日もそばにいて


…実季。……実季。
ん、…ん?いけない。寝てた。何時?え?何時?

あ〜、良かった。ちょっとだけ寝てたんだ。
5分しか経っていなかった。

…ん゙ー。…それにしても…夢だったのかな。呼ばれた気がしたけど。…神坂君かな。
でも…、神坂君は寝てるようだし。

あっ、私…顔!頬に手を当てた。雑誌の跡が顔に付いていないだろうか。
線になって付いてたら中々消えない…今ついてたらそのままになってしまう。やだ、どうしょう。慌てた。焦った。
洗面所で確認しようと立ち上がった。つもりだった。脚に力が入らすふらついた。え?ちょっと?

「あ゙!」

…悪気はないんだけど。
ごめん、ドラマに有りがちな事になってしまった。

「ぅ」

小さく声が洩れた。

「…神坂君、ごめん、大丈夫?」

「あー、はい、ハハ、中々…随分と、思い切った起こし方ですね」

そう。想像通り、神坂君の上に乗っかるように倒れてしまった。受け止められて抱きしめられていた。
痺れたってことではなかったけど、同じ体勢で動かなかったから、急に立ち上がろうとして脚が言うことをきかなかったんだ。

「わー、ごめんね、違うの。まだ起こすつもりじゃなくて、これは違うの。私、気持ち良くてついうっかりウトウトしたみたいで。それで顔に本の跡が付いてないか確認したくて、見ようと思ったの。慌てて立ち上がったら…。そしたら、こんな事に。わざとじゃないのよ?偶然着地して…」

「…ふぅ。どれ、どれ…、どこです?俺が見ましょう」

え?
元々倒れ込んで近くになってた顔、至近距離で見られることになった。
跡の確認というよりもじっと見つめられている気がした。

「……あ、の、神坂君?…」

「…何も、跡は無いです…綺麗だ…」

「あ、無い?本当?大丈夫?有難う」

パッと離れた。…つもりだった。体が離れなかった。えっ。

「神坂、君?」

「離したくない、です」

「え、な、に…」

…何。寝惚けてるの?………今の、何?何、言ったの?…はなしたくない?はい?

「て、訳にはいかないので、俺もそろそろ起きます」

「あ、う、うん。…わっ」

神坂君が上半身を起こしたから、一緒に起きる感じになった。

「ハハ。もう大丈夫ですか?立てますか?」

前髪を軽く掻き上げた。今日は無造作なヘアスタイルだ。

「あ、うん、大丈夫だと思う」

「慌てないで、ゆっくりでいいですよ?あ、座ります?」

支えられそうになったところを慌てて座った。

「うん、有難う、大丈夫。…ねえ、神坂君、さっき」

「はい」

私を呼んだ?って聞こうとした。慌てて首を振った。

「あ、ううん、何でも無い。あ、神坂君こそ、起きぬけだから顔、確認する?」

洗面所を指した。

「俺、涎の跡とか、あります?」

えっ?そんなものは無い。そんな意味で言った訳ではなかった。
あ、これ、笑うところだ。そうよ。笑い返さなきゃだ。だけど、そんな余裕は無かった。ただただ焦っていた。

「な、無い無い。無いと思う」

慌てて手を振った。…焦りすぎ…。

「でも一応、顔、洗ってきます。いいですか?使って」

「うん、いいよ。どうぞどうぞ。タオル、新しいの使って?棚にある物、どれでもいいから」

「はい、では行ってきます」

「う、ん」

……はぁ、顔…近かった。わざと?確信犯?涎なんて垂らして寝てる訳が無いのに…。
あー、上に乗ってしまったのは…自分が蒔いた種だけど……無駄にドキドキした。
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