今日も明日もそばにいて

さっぱりした顔をして戻って来た。腕時計を外していたのだろう。留めながら時間を確認したようだ。

「実季先輩さえ良かったら…そろそろ出掛けましょうか?」

「うん、いいよ、大丈夫。あ、待ってね。……バッグ、バッグ…。忘れ物しないように確認してバッグに入れないと…」

「あ、慌てなくて大丈夫です、ゆっくりで」

小さめのトートバッグにハンカチや携帯を入れていく。財布を入れて、…と。
あ、ストラップ…。

「神坂君、…これ、神坂君よね?」

ストラップを引っ張り出して見せた。

「はい」

やっぱりそうよね。

「ねえ、いつの間に?」

「実季先輩は隙だらけだから」

「え?」

「それは、階段を上る前に買っておいて、後は展望台で景色を眺めている時に付けました。観光地に来たみたいで嫌かも知れないと思って、付けて内側に垂らしておきました。初デートの記念です。もう行けます?さあ、行きましょう」

え?あ、…。は。


「戸締まり見ましたか?」

「えっ?…あ、はい、大丈夫。あ、ごめん、やっぱり見てくる」

玄関まで来ていたけど、部屋に戻った。

…。

ベランダのサッシも施錠してある。そんな事は解っていた。だってさっき閉めて掛けたばっかり。

…。

言葉は人を簡単に勘違いさせる。それが、例えば言い間違いだとしても。本来の言葉の意味のまま取ってしまう。

…。


「実季先輩〜。大丈夫です〜?」

…。

「あ、は〜い。
ごめん、気になったらどうしても気になっちゃって。納得出来ないと不安だから。結局、大丈夫だった」

「そんなもんです。じゃあ…大丈夫ですね、行きましょう」

「うん」

この男。私をどうしたいの。
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