今日も明日もそばにいて
最早、心、此処にあらず、の状態だ。放心している。
…何…何?…。どうなってるの。どういう事?思えばずっとドキドキしている。……ペナルティーっていっても。……。
「こ、………神坂君、一体…」
「折角一つ減ったのに、また追加になりましたね。もう部屋に帰って来てるから、決まり事は終わりにしましょう」
…それは助かる。……そんな事よりだ。さっきの…。
「ねえ?どうして、こんな…」
「……俺、好きですよ…」
「…えっ?」
ドキッ。な、に?
「実季さんの、ねえ、って言う問い掛けの言葉」
「え」
「よく付けるじゃないですか。ねえ、神坂君、って感じで」
「え、あ、…まあ、確かに言うけど、あのね…」
知りたいのはそれじゃない…。
「俺、好きですよ」
ドキッ…。
「あ、それより…。ねえ、ぁ…、さっき…のはどうして?…あれってペナルティー、なの?どうして…」
キスなの?消化する為に、わざと…したの?ペナルティーにかこつけた悪戯?…え、全部、こんな……するの?
…。
「ペナルティーと言えば、ペナルティー。利用しただけです」
珈琲が少し冷めた。口にしている。
「それだけでは無いと思ってください」
え?私は内面で凄く動転しているのよ?普通なら普通に伝わるモノも、今の私には伝わらないのよ。ペナルティーを利用したって、どういう…。
「神坂君…あのね…」
「次は公園に行きましょう。実季さんも俺も晴れ女と晴れ男みたいだし。きっと来週も晴れますよ?
じゃあ、俺、帰ります。また一つペナルティーを使って、公園に行く時、お弁当を作って来てください。それと…」
え?…ふわっと抱きしめられた。……あ。
「これも。ペナルティー、一つ減らしますから」
ギュッと抱きしめる腕に力が増した。…あ、の…神坂君?
暫く抱きしめられたと思う。…ううん。実際は長かったのか短かったのか定かでは無い。
「…俺だって…半端なくドキドキしてるんですよ…」
「え?」
「何でもないです。今度こそ、帰ります。おやすみなさい。
あー、トイレに行くって、待ち合わせで待たせてすみませんでした。ショップが思った以上に混んでいたので」
玄関に行って靴を履いて出たかと思うと、軽快な靴音が遠ざかって行くのが聞こえて来た。
あ、…また、駆けているんだ。全然若いよ。いつも風のようね…。