今日も明日もそばにいて

「有難う、もういい、有難う、ごめんね」

「実季さん…」

「拘ってごめんね。はぁぁ、…私を知ってもらう。その上で駄目なモノがあったらその時は考えて?…早めに手を打って終わ」

首を振った。

「…はぁ。何を考えるんですか?別れる事が前提?つき合うのは無しって事?
駄目なモノっていうのは、お互いにきっとあります。それは譲り合えばいいんじゃないですか?直せって言われても、無理なモノ、…譲れない部分って、きっとあると思うんです。俺達はもう大人だから。大人だから、今更どうしても変えられない自分の決まり事って、多かれ少なかれあるでしょ」

…そうかも知れない。

「もの凄〜く小さい事でも、譲れない事、あるでしょ?」

「…うん、多分あると思う」

「育って来た環境だって違うんです。あって当たり前なんです。個人個人を尊重した、共同生活だと思えばいいんじゃないですかね。あぁ、…これは、一緒に暮らしたらって場合の例えみたいなもんですけど」

「…神坂君は大人ね。あ、バカにして言ってるんじゃないのよ?色々、考えているんだなと思って」

「一応、男ですから。責任や覚悟無しに大事な話は出来ません。この歳で好きだって簡単には言えません。一緒に居たいって言っているのに、貴女に対して無責任になりたくないですから」

…ふぅ。

「何だか、夜、話そうって言ってたけど、色々話してしまったわね」

「んー、知りたい事はまだまだ無限にありますよ?好きな色、花、食べ物、細かい事から何でも知りたいと思ったら質問責めになります。会社では長くつき合っていても、個人的にはまだ二週間にも満たないんですから」

あっ、はっ!?そうよ…そう思ったら…関係を持った事、なんて早いのかしら…。確認して直ぐなんて。はぁ…焦って…実は繋ぎ止めようと、どこかで思ってたんじゃ……。自分が解らない、怖い…。
…私ったら。まだ承諾しちゃ駄目だったのかな。…好きって確認してそれで、その雰囲気のまま…。でも、神坂君は昨日今日会ったばかりの人では無いから。…あれ?…そうは言っても可笑しいのかな。
でも、もうしちゃった…しちゃったモノはもう元には戻せないじゃない?

「ん?どうしました?顔色というか、何か変ですよ?」

「ねえ…神坂君…」

「はい?」

「私、…誘惑なんてしてないよね?ね?」

「ぇえ?」
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