今日も明日もそばにいて
⑧だったらリスタートすればいい

「これはこれで、食べ慣れた味なんだけど、何だか濃いね」

「お店の物はどうしてもね。お酒がすすむように作ってあるんでしょ?」

「なるほど、だからなんだ。喉が渇く」

「フフ。お店の思う壺ね」

「…実季さん。ちゃんと話して来たから」

「そう…。彼女は理解出来たのかしら…」

「大丈夫でしょう。もう惚けた振りも出来ないと思うし」

「…好きだったのよ。本気でね。でも素直になるには、難しくなったのよね。…可愛らしい女性ね。女性らしい女性っていうのかな。…甘え方を知ってる…」

「それに振り回されるんですよ?」

「振り回されてるじゃない、いいように。まあ、今より若かったでしょうから?仕方ないところもあったでしょうね」

…。

「終わったのなら、この話もおしまい。もうヤキモチは懲り懲り…」

…やっぱり妬いていたのか。

「何も無かったですからね、昔も今も。今日も」

「はい。はい、ご馳走様でした」

ほとんど食べずに箸を置いてしまった。


珈琲を入れて、ソファーに移動した。

「お風呂、いつでもどうぞ?」

「あ、うん」

今の言い方……やっぱり、まだどっかツンツンしてるよな。まだご機嫌斜めって事か。
はぁ…説明もした、もう終わった事だ。
あ、志野田に連絡しとくか。
ポケットに手を入れ、携帯を取り出した。電話…いや、メールにしとくか。

【海和と会って話した。解ったって事だったから多分もう大丈夫だ。会社にももう来ないと思う。 神坂】

【そうか、取り敢えずは安心だな。一件落着って事で大丈夫か?】

【多分】

【まあ、相手が海和だから、掴み切れないものはあるな】

【ああ。また、お邪魔したか?】

【いや、一人だ】

【なんだ、そうなのか。じゃあ、珍しいな、メールをこんなにするなんて】

【これはな、既成事実だ。こうして努力しておけば、今後お前に変に探られる事も無い。俺だって普段からメールするんだ、ってね】

【じゃあ、やっぱり、本当は今もお邪魔したのか】

【何故、解った…】

【努力してるなんて、喋り過ぎだからだよ。聞かれても無い事を喋りたくなるもんだ、誤魔化す時は】

【鋭いなお前。もう、やめるぞ?待たせてる】

【あからさまだな。おやすみ、邪魔したな】

【おやすみ〜、柊一】

フッ。これは梨香のやつだな。志野田の彼女は俺のいとこだ。
上手くいってるようだし…ラブラブだな。
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