今日も明日もそばにいて

【志野田、告白されたけど、ちゃんと断ったぞ】

【そうか、お疲れ。今日の事は、もう言ってあるのか？杜咲さんに】

【言ってない。まだ今日の今日じゃないか。終わってからの方がいいと思って】

【まあな、話すタイミングも無いわな】

【今から伝えておくよ】

【伝える？会わないのか？そいつは駄目だぞ。益々、拗れるぞ。会って話した方が無難だ。相手は若い女子社員なんだし。お前と一緒に居たところ、人が見てないとも限らない。お前が話す前に誰かから聞かされてたら。いつものパターンじゃないか、噂は恐いんだから。ただでさえ、解らなくて疑心して、そんな自分を自分で嫌な人間だと思わせてしまうじゃないか。
何も無くても女性と会ってるってだけで嫌なもんだろ？自分以外の異性と居るなんて】

【解ってる】

【じゃあ、頑張れ】

【ああ、普通に行ってくる。おやすみ】

【おやすみ】

志野田、今日は一人だな。
実季さん、ご飯は終わってるよな。スイーツを買って行こうか。



ピンポン。

「…お疲れ様でした」

「急に来てごめん。あ、これ。珈琲のお供に」

「…有難う」

「ちょっと、いい？」

「……はい、どうぞ」

…何かやっぱり、話の間が悪いよな。


「後輩の大谷さん解るよね？」

「…うん」

私に神坂君との仲を聞いて来た子だ。

「その大谷さんにさっき告白されたんだ。ちゃんと断ったから。それから、随分待たせてしまったから、ご飯を奢った」

何でも無いから淡々と話したつもりだ。

「…そう」

「うん」

そうって…それだけか。経緯とか聞かないんだな。

「納得はしてくれたの？」

「ああ、何も問題無く」

「…そう」

仕事終わりから今までって事…。なんて言って断ったのかな…。若い子はなんていうか、キャーキャーしてるから、きっと明日はその話をロッカールームで話したりするんだろうな。

「実季さん…何も心配しないで？終わった事だから」

返事はまた無い…か。何か考えてるはずなんだけどな。何も言わなくなったのがその証拠じゃないか。


今日も背を向けたまま聞いていた。私、…可愛らしく無い。大学の後輩の話も、今の話も、神坂君がモテる事に妬いて…拗ねてる。

「実季さん…」

…。

はぁ…喋らないつもりか。志野田が言ったみたいにしたらいいのか…。謝るってのも、何か悪い事をして隠してる訳じゃない。逆にそんな、抱きしめたりして、何かあった事を誤魔化そうとしてるのかって、思わないかな。…。はぁ、…こっちを向こうとしない事が、少なくてもモヤモヤと壁があるって事か…。そうだよな。

「実季」