今日も明日もそばにいて
「疲れましたか?大丈夫ですか?」

「…大丈夫。ちょっとフワッとしてるだけ…」

心も身体も、どちらも落ち着かない。
曇りのない窓ガラスが夜の闇をバックに鏡になり、外を眺めている私と後ろに居る神坂君を映していた。
ガラスを介して視線が合った。

なんでも無い日が特別な日でもいい、って言ったけど。今夜宿泊する部屋が、こんな上階だとは思ってもみなかった。

「綺麗ね…」

「人工物の明かり?」

「うん、カラフルな作られた色…。綺麗だけど、でも凄く無機質ね…。
…海月が綺麗だったから、余計そう思うのかも…」

ユラユラと…自分を包み込むものに逆らわず、身を委ねるように漂っていた。


「そうだな」

あ、…。後ろから抱きしめられた。

「実季…」

あ…駄目。


少し前…水族館の余韻を残しながらホテルのエレベーターに乗った。
扉が閉まり、並んで立つ指先が触れ、手を握られた。
ドンドン上を目指すエレベーターに乗っている時…。
到着してエスコートされるように部屋に足を踏み入れた時…。
どの場面も全て…とっくに身体中でドキドキしていた。


心臓が痛いくらい高鳴っている。苦しい動悸はアルコールのせい?
意識は全部、触れている背中、息のかかる首筋、…腕に集中している。
身体を包むように前で手を重ね、握られていた。

「実季…今日はごめん。こんな日にあんな事になるなんて。急な事だったとは言え、また嫌な思いをさせたよね。…あの子とはお茶をした。断ったら泣かれてしまったんだ。だから、涙が収まるまで喫茶店に居た」

「そう…。…うん。私なら大丈夫。…本当よ?大丈夫だから。まだ居るのかな、…言ってくる子って」

「それは…俺には解らないな…」

…あ、唇が少しだけ首に触れた。

「ん…そうよね」

勝手に動悸が増した。

「誰が言って来ても、実季だけだから。心配しないで」

また触れた。

「…うん、信じてるから大丈夫。…ただ」

「…ん?」

直ぐ耳元で声がした。

「…やっぱり、妬ける」

「実季…。はぁ…、俺は嬉しいよ」

重ねられていた手をギュッと握られ囲い込むように抱きしめられた。…あ。ドキドキしているのが伝わっちゃう。

「私は嬉しくない…」

「うん、ごめん。…ごめん、実季…」

肩を包むように腕が回された。…あ、もしかして。今日のこれは最近の…、今日も告白があったばかりだけど、お詫びのつもりなのかも。私、妬いて不機嫌で拗ねちゃったから。

…あ。耳たぶに唇が触れた。

「実季…何考えてる?…」

…キャ。不意に抱き上げられた。

「余計な考え事は…もう無しだ…もう限界…」
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