今日も明日もそばにいて
「フッ…。…ふぅ」

あれから、ほぼ10年か…。
腕の中で微睡んでいる実季の頭を胸に押し付け撫でた。

「ん…ん、…神坂、君?」

上目遣いで実季が見てきた。

「あぁ、起きてたんだ」

「うん、…どうしたの?思い出し笑い?それとも、何かまずいの?」

「ん?んん〜。まずいと言えばまずい。ヤバかったと言った方が合ってるかな…」

「え、何の事?ねえ、…何の事?…女子社員と何かあったの?」

「女子社員か…。確かに女子社員ではあるなぁ」

…何?…何かを思い出したような緩んだ顔…。な、に?その顔…。


ムクっといきなり実季が起き上がった。
シーツを巻き付けながら、大きなベッドからズリズリ移動して下りた。

「実季?…」

落ちている下着、ワンピースを拾い上げて歩いて行く。
どうやら身につける為に移動してるようだ。

…どうした。

「実季、何して…」

あっという間に身支度を整えた実季は、険しい顔をしてバッグを手に勢いよく戻って来た。

「…帰ります。神坂君は朝までどうぞごゆっくり!」

「は?実季?」

何が何だかサッパリ解らない。急に…機嫌が悪い。どうしたんだ。
ツカツカと部屋を出て行こうとする。

「実季。おい、待て」

飛び降りて追いついて、身体に片腕を回し掴まえた。

「待てって、急にどうした…」

「…離して。…帰る。…帰りたい。離して。…帰るの」

「どうしたって言うんだ急に」

…。

またか。また何も話さないつもりか。

「…はぁ。解らないから聞いてる。何も言わないで機嫌を悪くされても困る…実季」

振り返させた。肩を掴んで返事を催促するつもりで見つめた。

…。

「実季」

「…ねえ?何をしたの?…女子社員と何があったの?神坂君が…何かしたの?泣いてる子をどうやって慰めたの?」

「…え?は?」

実季の顔は怖いくらい真剣だ。…あ…はぁ…はいはい。…なんだ…解かったぞ。これは単純な、可愛い誤解だ。思い込みの勘違いだ。

実季を抱き上げた。

「キャッ、嫌。ちょっと、何?有耶無耶にしないで。…嫌…下ろして。こんなのは嫌なの、嫌。…シて誤魔化されるのは嫌。帰るんだから下ろして。ちょっと、帰るって言ってるでしょ?」

ポカポカ叩いて足をバタバタしようとするが、…そうはさせない。力は断然俺の方が強い。

「駄目だ。間違ってる。女子社員は女子社員だけど…それは昔の実季の事だ」
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