今日も明日もそばにいて

「あ、ドリンク剤はあいつですよ〜」

あ、…そうなのね。じゃあ、メールしておこう。

【有難う。力こぶ。昨夜の話、聞かなくても大丈夫だから。本当よ?】

…んー。もう、出ちゃったかな…。私も、戻ろう。もう始業時間になるし。

「実季…」

…え?…空耳?

「実季」

…まただ。でも、はっきり聞こえた。

「神坂君?な、の?」

…。

はぁ。考えてたからかな。昨夜会ってないから、朝から恋しく思い過ぎよね…。
ん?…キャ…ぅぐ。後ろから口を手で塞がれた。…?……誰?…。声が出せない。え?

「実季、こっち…」

あ。…あぁ。


「実季」

「はぁ、…神坂君…びっくりするでしょ」

居たの?いつから?…ずっと?

「長い…。長いよ…」

「え?」

「志野田との話。…長い」

「え、でも」

「待ってたんだ。ドリンク剤、男じゃないからフロアでは飲まないだろうから、きっとこっちに出て来るって」

「あ、うん。有難う。あ、もう飲んじゃった」

「…実季」

「はい?」

「…オフィスラブに有りがちな事してみる?」

え?…。

「こういう事…」

あ…。ん、んん、…。神坂、君?…ん゙ん゙?…んん、ん、んん。……駄目よ、こんな…朝から強力なのは…。

「フッ。…ドリンク剤の味がする…ん、ん」

また?あ、…力が…。い、や…。

「ん…今夜、遅くなっても行くから、…寝ちゃだめだよ」

あ、…腰が…。

「はぁ…うん、大丈夫、今日はちゃんと起きてるから」

「フ。うん。ごめん、もう行かないと。じゃあな。おっと、大丈夫か?実季が悪い。志野田と話してるから、時間が無くなった」

…はぁ。…。腰が…抜けた。辛うじて支えてくれて座らせてくれたけど。
…もう!やり逃げで置き去り?時間が無いって…。だったら…こんなにもしなきゃいいでしょ。こんな…、朝から…。

え……ヤキモチ?…これってもしかして…志野田君に?

…。

あ、もう…。

…。

私だってもう時間が無いんだから。…フフ。今夜ご飯作って待ってようかな。
唇…、まだ神坂君の余韻が。はぁぁ、馬鹿ね…、これから仕事なのに…。
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