今日も明日もそばにいて
…もう。遅くなるのは解ってるけど、お、そ、い〜。
…鍵、お互いに合鍵は持っていない。渡していたら寝てていいって事でも無いけど。
ピンポン。あ、帰って来た。
「お帰りなさい」
「ただいま…」
…あ。飲んでる…酔ってる…。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫。このくらいは普通、普通」
普通の人間は普通って強調しない。…ん、もう…。一応聞いてみようかな。
「ご飯は?」
「…ちょっとだけ」
「食べたの?食べるの?どっち?」
「…ちょっとだけ食べる」
「お風呂は?後にする?」
「ん〜。先にする」
「大丈夫?入っても」
「うん、シャワーで流す程度に入るから」
鞄を受け取った。シュッと引き抜いたネクタイを渡された。靴下、スーツ、シャツ…後ろから拾い上げていった。
「ふぅ~、はぁぁスッキリした…」
…さっき迄と随分違う。
「お水飲む?」
「ああ」
「沢山飲んでおいた方がいいわね、喉、渇くでしょ?」
「ん。あのさ~、聞かなくていいの?」
「あ、うん。昨日の事でしょ?聞かない。だからって拗ねたりもしないから」
「…ふ~ん。でも一応。会ったのは取引先の担当の営業の人。結婚前提のつき合いを打診された。好きな人がいるって断った。だけど二度と会わない相手じゃない。これからの仕事上のつき合いは変わらずある相手だから」
「解った」
…。
直ぐ無口になって…やっぱり気にしてるじゃないか。
「実季?…ご飯いい?ちょっとだけ食べるよ」
「…あ、はい。…はいはい。…はい。…このくらい?」
用意してあったお茶碗にご飯を装って見せた。
「うん。…実季?無理するな?実季は実季だ」
「…え?」
「気になるなら根掘り葉掘り聞けばいい。…拗ねたって構わないから」
腕を掴んだ。
「………じゃあ…どんな人?」
「フッ。うん、役員のお嬢さんだ。でもそういうの抜きで仕事は出来る人だ。俺が営業担当になってから、ずっと変わらない向こうの担当だ」
「………綺麗な人?」
「そうだな…、綺麗な人だと思うよ?普通かな?いや、可愛いタイプかな?」
………。
「ハハ。ごめんごめん。元々が仕事上だけのつき合いだ。綺麗も可愛いも無いさ、どうであろうと全く関係無い」
引き寄せるようにしてストンと座らされた。頬に手を当てられた。
「…うん。…一度も…」
「ん?」
「一度も…心が動いたことはなかったの?」
…。
「その間。…嫌」
「フフ。ん。実季、やっぱり妬いてるだろ……可愛い…。そんな事、ある訳ない。ずっと実季の事を思ってたんだから。誰であろうと関係なかったよ」
…。んー。何か…ヤだ…。ん゙ー、年齢は神坂君より若いのかな…。結婚前提なんて、プロポーズみたいな言い方されたんだ…。