今日も明日もそばにいて


「一緒に居たいとは凄く思ってるの」

「うん」

「でも、神坂君の部屋に出入りしてるところを誰かに見られたらと思うと、心配もあるの」

「うん」

…。

「それで?」

「一緒に居たいと思い始めたら駄目なの…」

「何故?」

「一緒に居られない事を考えたら、溜め息が出るの」

…。

「じゃあ、その溜め息は無しにすればいいじゃないですか」

「一緒に暮らすって事?」

「そうです。…はぁ…解りました。心配があって気が進まないなら、止めておきましょう。
鍵は渡しましたから、いつでも来てください?」

「…うん」

「何故、うん、なんです。スリリングな方がいいんだ…」

「え?だって、神坂君だって今…」

「ゴチャゴチャ言わず、一緒に暮らせばいいんです」

「え?!」

「一緒に居たいんでしょ?どうなんです?」

「…一緒がいい」

「…もう。決まりですよ?今日からです」

「えっ?」

「今日からです。有無は言わせません。あ、それから、この辺にうちの会社の人間は住んでいません。この部屋を借りる時、念入りに調査しました。住んでいない事を確認して借りましたから」

「え?どういう事?」

「…妄想ですよ。実季とつき合えるようになった事を想定して、行き来しても、実季が誰の目にも触れる事が無いように。考えてましたから。今後もこの辺に誰かが住む事はまず無いと思います。何故なら、ここは会社からも少し遠い。実季や、志野田が居る辺りはマンションが凄く多いし、何より会社に近くて便利だ。住むならその辺りを選ぶはずです。好き好んで遠くなる方は選ばないでしょ。
…どうですか?実季を意識したら、こんな事をとうの昔から考えていたんです。引きます?」

…引きはしない。男の子の可愛い妄想の内なのかな。

「…凄い、実行するなんて。…なんていうか、マルチに出来る男なのね。誉めてるのよ?引いてるんじゃ無いのよ?」

「ふぅ、そうですか?あと、俺は良からぬ妄想の中でも、ずっと実季と呼んでいました」

…それは今はもう解ってる。だから寝言も実季になるのよね?

「流石にキモいですか?」

首を振った。

「全然。女子だって、…言わないけど、案外有らぬ想像とか、してるものよ?そんな事、なんでも無いと思う」

「実季は気づいてますか?」
< 96 / 100 >

この作品をシェア

pagetop