ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「あっ、そうだ」


思い出したように副社長が振り向いた。


「横山さん、ケイの友達」


隠されてた視界が広がる。
コックスタイルに身を包んだ男の視線が、私の方に向けられた。


ドキッとするほど鋭い眼差しだった。
切れ長の一重の目は、どちらかと言うと怖そうな雰囲気。


「ヨロシク。大輔のダチです」


声はソフトで優しそうだけど。


「初めまして。横山 聖と言います」


丁寧に自己紹介をして項垂れる。
面食らったような顔をした男は、顎を突き出すように礼をした。


「今日は空いてんな」


予約席のプレートが置かれた窓辺のテーブルに向かいながら副社長が見回す。


「週初めはいつもこんなだ」


革張りにされた長方形のメニューを手に後を追ってくると、椅子に座った副社長に手渡した。


「何にする?」


ゆっくり選ばせるとかいう気遣いは無さそう。
友人だからかもしれないけど、もう少し猶予をくれてもいいのに。



「どうぞ」


副社長は何を食べるか決めてるらしく、メニューを私とケイに向けた。


「俺はアレな」


アレと言われたものが気にかかる。

私の横でメニューと戦ってるケイは、副社長の言った言葉を聞いてないみたいだった。


「この間食べたビーフシチューも美味しかったけど、このクリームチーズコロッケも気になる」


うーん…と悩む姿は女子だ。
私はそんなケイの横であっさりと食べる物を決めた。


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