闇に咲く華


「御影か……」


数学の先生がそう呟いたとき、ひとりの男子生徒が教室内へと入って来た。


さすがにぶつかりこそしなかったけれど、扉の桟ギリギリを通る、色の抜け過ぎたグレーの髪。


ゾッとするほどキレイに整ってはいるけれど、無表情だからか不機嫌そうな顔。


切れ長のスッキリとした目元のせいなのか、髪色が白っぽいグレーだからか、全体的に冷たい印象に見える。


こういう髪色のことを何て言うのだろう。


真っ白ではないけれど、ほぼ白に近い灰色は陽に当たっている部分が銀色に輝いている。


とにかく異様な雰囲気は、見る者を釘付けにする。


こういうのって、怖いもの見たさに似ている気がした。


これでもかというほど目立つ外見をしていながら、どこか静かな印象を受ける男が気だるげにこちらへと歩いてくる。


突然現れた、やけにインパクトのある男子に驚いていると……。


「やっと来たな。お前、春休み終わってんの気付いてなかったんじゃねえのか」


満島大牙が、その男に笑いながら声をかけた。


春休みが明けてからもう5日も過ぎてるけど、今日気づいたってこと?

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