闇に咲く華
授業が再開してから、約15分。
計ったわけではないので、正確かどうかはわからないけれど、その間ずっと机にふせて静かだった男が、ふいに顔を上げたのが視界の端で見えた。
「お前、誰だ?」
隣から強い視線を感じて、その言葉が私に向けられたものだということは嫌でもわかった。
誰って……それ、今思ったの?
どうして入って来たときに気づかなかったの?
なにより、この15分ずっと窓の方を向いたままだったのに、いったい何のタイミングなわけ。
知らない人間が隣に座っていることに驚いた、という様子で聞いてきた声の音量は、数学の授業を再び中断させるにはじゅうぶんだった。
「転校生だ。2年からこのクラスに入った松井姫乃さん」
二度も同じ生徒に邪魔をされた先生が、呆れたように首を振りながら言う。
紹介されてしまっては無視するわけにもいかない。
仕方なく隣に顔を向けると、男もこちらを見ていた。
「彼は御影白玖くん。隣同士なんだしお互い仲良くな」
仲良くって……。
どう考えても無理だと思うんだけど。
隣といっても人ひとり通れるスペースは空いているのに、御影白玖の威圧感は、距離を近く感じさせる。