闇に咲く華
「あ……」
私の姿を見て、少し驚いたようにそう呟いた女子が、自分の席らしい前の方の机に向かい。
「ペンケース忘れて……」
どうやら忘れ物を取りに来たらしい。
「次、移動教室なの」
そうか。だから、誰もいないのか。
納得していると、その子がペンケースを手に私を振り返った。
「あの……よかったら一緒に、行く?」
次がどこの教室なのか、わかっていなかったりするので、そうしてくれるのはありがたい。
「うん、ありがとう」
そう言って軽く微笑むと、長い髪をお団子にしている、白い肌がキレイなその子が、なぜかホッとしたような笑顔を見せた。
「よかった」
なにがよかったのかと思い首を傾げると、その子が私を見て声を出した。
「松井さん、あまり話しかけて欲しくなさそうだし、よけいなお世話って言われるかと思って」
ひとりでいいと思ってはいても、別に敵を作りたいわけでもない。
なので、そこまで避けていたつもりはなく、どう返せばいいのかわからずにいると、その子が歩き出した。
「あ、私、小池真緒。よろしく」