闇に咲く華
朝、遅くなるって言ってたような。
舞台を観に行くから、帰りは遅くなるとかなんとか。
どうしてこんな日に限って鍵を忘れたのか、自分で自分が嫌になっていると、自宅の鍵を開ける白玖が私を見た。
「家で待ってろよ」
家でって、白玖の家でってこと?
「いいよ。あの、それなら傘貸してくれない? どこかで時間潰すし」
「どこかって?」
どこかまでは、まだ考えてなかった。
「カフェ……とか?」
適当に思い付いたことを言うと、玄関を開けた白玖がふっと笑った。
「飲み物くらいなら家にもある」
いや、そうだろうけど。
「親遅せえなら、飯は?」
言われてみればと思い、自分の家の玄関を指差した。
「家の中に……あると思う」
母親が用意しておくと言っていたから。
「それじゃ、あっても食えねえな」
ホントなにやってんだろ。
鍵がないってだけで、すぐそこにあるものも手が届かない。
自分に呆れていると……。
「入れよ。どうせ誰もいねえし。それに家なら、飯もあって食えるしな」
そう言って、白玖が玄関を大きく開けた。