LALALA
「やっぱり季里ちゃんも、自営の人なんだ」


眉を下げて微笑んだ芝崎さんは、言ってから、コーヒーを飲み込んだ。


「…芝崎さんは、好きな時間にアイス、食べますか?」
「え?アイス?」
「いや、すみません!変なこと聞いて。なんでもないです…」
「俺は、お客さん来なくて暇なときしか休憩とれないから。そのときはアイス、ガツガツ食うよ」


にっこりと笑った芝崎さんの頬には、くっきりと笑窪が刻まれた。


「どんなお仕事なの?季里ちゃんは」
「ええっと、アクセサリーとか作ってて」
「そうか、やっぱりね。すごいね、器用なんだ」


ホットサンドに被り付いた芝崎さんは、なぜか納得がいったような顔でひとり勝手に頷いた。

やっぱり…?
どういう意味だろう。


「ごめん、俺そういうのに疎いんだけど、有名なの?」
「そうでもないです。まだまだ駆け出しっていうか」


実は本とか出してて、この業界ではそこそこ有名かもしれない。
夏子のお店に取材に来た出版社の人が前から私に興味を持ってくれてたらしく、アクセサリー作品の写真や作り方を纏めた作品集を出版してもらっていた。

でも、そんなこと言うのは。


『つか、季里には雨が降ろうが関係ないだろ。一日中家にいれるんだし。それで贅沢な旅行が出来るくらい稼げるんだからほんと羨ましいよ』


自慢みたいで、気が引ける。
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