LALALA
口笛の隣は、ペルシュというカフェ。
便箋とペンを持ってった私は、カウンターの一番奥に座った。
間口は狭いけど意外と奥行きがあって広い店内は、もうすぐお昼なので、近所に住む主婦たちや付近のビルに勤めてるサラリーマンたちで混み合っている。
ホットサンドを食べ終えた私は、アイスカフェオレの残りをちびちび飲みながら、夏子の店で買ったお気に入りの便箋を広げた。
早速書き始めようとしたとき。
「隣、いいかな?」
聞き覚えのある声が、背後から聞こえた。
いつもは朝に、変な調子のハミングを口ずさんでる声だった。
「芝崎さん、どうぞどうぞ」
私は心ばかり体を横にずらして、隣のスペースを空けた。
「ありがとう、季里ちゃん。ここしか席空いてなくてね」
スツールに腰を下ろした芝崎さんは、「マスター、コーヒーください」注文して、私の手元に目を落とす。
「手紙?今時、珍しいね」
お、っという驚いたような表情で、芝崎さんは言った。
「はい、お礼状です」
「へえ、偉いね。若いのにしっかりしてて」
「そんなことないですよ。ただメールとかより、気持ちが伝わるかなって思って。」
芝崎さんのコーヒーが運ばれてきた。
湯気が立つカップを、ブラックのまま芝崎さんが持ち上げる。
「芝崎さん、休憩ですか?」
「いや、今日月曜日だから。お休みだよ」
「あ、そっか!今日月曜日かぁ。いつも家にいると曜日感覚が狂っちゃうんですよね」