LALALA
突然、爽やかな笑顔を向けられた夏子は、びくっと肩を上げた。


「い、いえ…お構い無く」
「こんにちは、芝崎です。俺、隣で口笛っていう床屋をやってます。良かったらお友だちとかに紹介してね」
「は、はあ…」


戸惑いながら夏子が頷く。
テイクアウトのコーヒーが出来ると、芝崎さんは私たちに今一度目配せしてから、足早にペルシュを去っていった。
どうやら忙しい合間を縫って、ドリンクを買いに来たらしい。

一人でお店を切り盛りするって大変だなあ、と思いながら、閉まったドアを見つめていると。


「ちょっと!」


夏子が顔面をこちらにずいっと接近させたから、一瞬焦点が合わなかった。


「へ?」
「へ?じゃないでしょ!どこが侍だかお父さんみたいな人、なのよ!?爽やかでめちゃくちゃイケメンじゃない!」


怒ったような口調で言われたので、私は困って肩を竦める。


「でも、三日前までは確かに…」
「素敵な人じゃない!確かに人当たりもいいし、あんな男の人に懇願されたら、断れっこないよね」
「いや、別に私は…」
「わかってるって!でも、ずっと家にこもって過ごすよりいいんじゃない?って、思ってきた、私。その、結婚式。他人のだけど、行ってみれば、意外に楽しいかも」
「うん…」


目を細め、夏子は朗らかに笑った。

一日、一人で頭を冷やす期間を過ごして、昨日になって私は、夏子に博史との経緯を話した。
電話口で、一緒に怒って、泣いて、また怒ってくれた。私が思ってても言えないような言葉で、罵って蹴散らかして散々罵倒してくれた。
今日は、ちょっと顔を見たいから、と言って、休憩時間を使ってこのペルシェで一緒にランチすることになったのだ。


「私、そろそろ行くね」メロンソーダを飲み干して、夏子が立ち上がる。
「今日の店番は、通しなの?」私もバッグを持ってレジに向かった。
「うん、しばらく通しで一日中店番。買い付けに行く暇もないのよ」


財布から千円札を出し、夏子は溜め息を吐いた。
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