LALALA
掴んだままでいた手を、そっと離した。けど握られてた感触が、手首にしばらく残って。

ずっと触られてるように錯覚されて。

余韻に、困る。


「…も、もしかして芝崎さんって、娘が生まれたら門限とか厳しくしちゃうタイプ?」
「絶対だね。嫌われるかな」
「だね」


車に戻った私たちは、同時に車内に乗り込んだ。
日差しが強くて、サウナ状態。
芝崎さんはエンジンを掛けて、冷房を強くしてから、アクセルを踏み込む直前に、くっと押し殺すように笑った。


「思い出し笑い?」
「いや。俺、季里ちゃんに、とことん男として意識されてないんだなーと思ってね」
「……」


それは芝崎さんも同じだ、って。
思った。


「もう少しで着くからね」
「は、はい…」


ただ乗ってる私より、高速を注意深く運転する方が何倍も疲れるはずなのに、「疲れてない?大丈夫?」とか、「お腹冷えちゃうから冷房弱くしよっか」とか。
完全に、私のこと、小学生くらいの子供として接してるんじゃないかな。

ちらり、と横を盗み見る。
目だけは真剣に前方を捉えているのに、に、っと結んだ口元からは、呑気なハミングが紡がれる。


「それ、いつも歌ってますけど、なんの曲ですか?」
「えっ」


急に我に返ったように、芝崎さんが堅い声を出した。


「いつも部屋に聞こえてきますよ、芝崎さんの鼻歌」
「ごめん、もしかして近所迷惑?」
「そんなことないですけど」
「次のインターで下りるから。そしたら、すぐだよ、式場」
「あ、はい…」


交わされた…?
あんまり鼻歌については突っ込まない方がいいのかな。
私は不思議に思いながら、シートに体を凭れた。



「おし、着いたよー」
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