LALALA

ひゅーひゅーひゅー!

なんていう、オーソドックスな冷やかし声が、一層大きくなったのだけど、芝崎さんはそんなこと気にする様子もなく、私の手を引きスタスタと歩き出した。

途中、式場の人に一言伝え、芝崎家控え室と書かれた部屋のドアの前で立ち止まると、一抹の迷いなどなくノックした。


「私はいいです…!外で待ってます」


必死で首を左右に振り、私はいつの間にか繋がれている右手を振り解こうとした。けど、


「はーい」年配の女性の声が、ドア越しに響いて。
「こんちわー」軽い調子で芝崎さんがドアを開けた。
「あら将吾、久し振りね」


逃げられないように、右手を握る手の力を強くするんだもん、…狡い。


「あら、こちらは…?」


ドアの近くまで来て迎えてくれた年配の女性に、私は急いで深く腰を曲げ、お辞儀をした。
涼しげな目元や、すっとした鼻筋、形の整った口元。芝崎さんにそっくりだった。お母さんで間違いないだろう。


「あの、川添季里です。本日は、おめでとうございます!」


テンパって、早口で言ってしまった私を見て、芝崎さんのお母さんはきょとんと目を見開いてから、ゆっくりと瞬きをした。


「俺が誘ったの」と、芝崎さんが隣で言うと、芝崎さんのお母さんは大袈裟なくらい口を大きく開け、手のひらで覆った。

…なんだろう、この緊張感…。


「まあまあまあ、遠いところわざわざお越しくださって…。将吾の母です。おいでくださって、どうもありがとうございます」
「い、いえ…」
「あっちが将吾の父なんですけど、今日の披露宴で最後に挨拶しなきゃいけないでしょう?新郎の父親だから。それでもう昨日から緊張しちゃって、どうしようもなくってねぇ」


可笑しそうにクスクスと笑いながらそう言った、芝崎さんのお母さんの目線を辿る。
窓際で、厳しい顔つきで姿勢よく座っていた芝崎さんのお父さんは、こちらに視線を寄越して会釈したと思ったら、またすぐに逸らした。
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