LALALA
職権濫用だよね、と、呆れた風に付け足して、芝崎さんは眉を下げて笑った。
雨が視界を覆うので、さっきからワイパーが動きっぱなしだった。
めまぐるしく、世界が変わる。
新しい気持ちで私は、芝崎さんをこそこそ見つめる。
「若い頃は人並みに恋もしてきたけど、花絵はほんとに昔から兄弟みたいだったから、恋愛感情なんて、全然」
ハンドルから離した右手で、芝崎さん口を覆った。
「君らが越して来たときから、一目惚れだったんだ。…どき。」
「どき?」
「年甲斐もなく俺、結構今恥ずかしいから、あんま見ないでくれる?」
「っ!」
横目で見た相手と目が合って。
「鼻歌。歌いたくなっちゃう。」
「えっ……?」
どき、っとした私は。
鶏みたいに首を左右に振ったり上下に動かしたりして、咄嗟に目を背けた。
「適当に歌ってたら、癖になっちゃって。季里ちゃんのこと、気を紛らわすために歌ってたんだ、ずっと。人のものだった君を、好きだったんだから。気晴らしでもしなきゃ、やってらんないだろ?」
「…っ……」
こんなに狭い車内では、はち切れそうなほど強い胸の高鳴りが、芝崎さんにも聞こえちゃうんじゃないかと不安に思った。
対向車のライトが光れば、頬が尋常じゃないくらい真っ赤だということも、いつもまにかこんなに、芝崎さんを好きになってしまったことも。
バレてしまうんじゃないかと思って私は、俯き加減で、窓に滲む常夜灯の光を、ひたすら目で追っ掛けていた。
コーポ・ホイッスルに着く頃には、午後八時を回ろうとしていた。
「夜ご飯とかどうするの?季里ちゃん」
貸駐車場に愛車を停めて、コーポ・ホイッスルまで歩く。雨は上がっていたけど、こちらでもついさっきまで強く降っていたらしく、アスファルトに水溜まりが出来ている。
夜の街のネオンが反射して、目がチカチカする。
「部屋で適当に食べます。って言っても、どうせ冷蔵庫にはろくなものが入ってないので、ビール飲みながらおつまみでも作ろうかな」
玄関の前まで送ってくれた芝崎さんが、途端にうきうきとした子供のような目をした。
雨が視界を覆うので、さっきからワイパーが動きっぱなしだった。
めまぐるしく、世界が変わる。
新しい気持ちで私は、芝崎さんをこそこそ見つめる。
「若い頃は人並みに恋もしてきたけど、花絵はほんとに昔から兄弟みたいだったから、恋愛感情なんて、全然」
ハンドルから離した右手で、芝崎さん口を覆った。
「君らが越して来たときから、一目惚れだったんだ。…どき。」
「どき?」
「年甲斐もなく俺、結構今恥ずかしいから、あんま見ないでくれる?」
「っ!」
横目で見た相手と目が合って。
「鼻歌。歌いたくなっちゃう。」
「えっ……?」
どき、っとした私は。
鶏みたいに首を左右に振ったり上下に動かしたりして、咄嗟に目を背けた。
「適当に歌ってたら、癖になっちゃって。季里ちゃんのこと、気を紛らわすために歌ってたんだ、ずっと。人のものだった君を、好きだったんだから。気晴らしでもしなきゃ、やってらんないだろ?」
「…っ……」
こんなに狭い車内では、はち切れそうなほど強い胸の高鳴りが、芝崎さんにも聞こえちゃうんじゃないかと不安に思った。
対向車のライトが光れば、頬が尋常じゃないくらい真っ赤だということも、いつもまにかこんなに、芝崎さんを好きになってしまったことも。
バレてしまうんじゃないかと思って私は、俯き加減で、窓に滲む常夜灯の光を、ひたすら目で追っ掛けていた。
コーポ・ホイッスルに着く頃には、午後八時を回ろうとしていた。
「夜ご飯とかどうするの?季里ちゃん」
貸駐車場に愛車を停めて、コーポ・ホイッスルまで歩く。雨は上がっていたけど、こちらでもついさっきまで強く降っていたらしく、アスファルトに水溜まりが出来ている。
夜の街のネオンが反射して、目がチカチカする。
「部屋で適当に食べます。って言っても、どうせ冷蔵庫にはろくなものが入ってないので、ビール飲みながらおつまみでも作ろうかな」
玄関の前まで送ってくれた芝崎さんが、途端にうきうきとした子供のような目をした。